マキネッタは、その使い勝手の良さで知られるコーヒー抽出器具です。最大の魅力は、いつでもすぐに美味しいコーヒーを楽しめる手軽さです。マキネッタ専用またはエスプレッソ用のコーヒー豆と水をセットし、直火にかけるだけで、煩わしい計量を省くことができます。使用後の洗浄も非常に簡単で、すぐに水で洗い流して食器かごに置いて乾かすだけです。
このコンパクトなコーヒーメーカーはどこにでも置け、常にテーブル上に出しておいてもインテリアの一部として映えます。
コストパフォーマンスに優れ、数千円で購入できる上に、シンプルな構造で故障も少ないのが特徴です。ビアレッティ社が開発した「モカエキスプレス」は、長期間使えるよう設計されており、イタリアでは50年以上も使われ続けている家庭も多くあります。また、使用するほどに本体がコーヒーの香りを吸収し、より一層好みの味わいが引き出せるようになります。
マキネッタの選び方
マキネッタを選ぶ際は、どのサイズを選ぶかが重要です。マキネッタは構造上、一度に決まった量のコーヒーを抽出するため、大きすぎるサイズを選ぶと適切な圧力がかからず、薄味のコーヒーができてしまいます。
ビアレッティ社が提供するサイズ選びのガイドラインは、購入を考える際の参考になるでしょう。
マキネッタのサイズとカップ数について
マキネッタのサイズは、使用する人数やコーヒーをどのように飲むかによって選ぶべきです。以下に一般的なマキネッタのカップ数とその特徴を表にまとめました。
カップ数 | 抽出量 | モデル名 |
---|---|---|
1カップ | 40ml | モカエキスプレス |
2カップ | 80ml | モカエキスプレス、ブリッカ、ヴィーナス |
3カップ | 120ml | モカエキスプレス |
4カップ | 160ml | モカエキスプレス、ブリッカ、ヴィーナス、モカインダクション |
6カップ | 240ml | モカエキスプレス、ヴィーナス、モカインダクション |
9カップ | 360ml | モカエキスプレス |
12カップ | 480ml | モカエキスプレス |
18カップ | 900ml | モカエキスプレス |
ビアレッティ社製のマキネッタは、一杯あたり約40~50mlのコーヒーを抽出できます。これは、一般的なドリップコーヒーの一杯分(約150ml)と比べると少ないため、速く飲み終わってしまうと感じる人もいるかもしれません。
実際に、一カップ用のマキネッタを選んだ人の中には、予想以上に抽出量が少なかったため、大きいサイズを選べばよかったと後悔する人もいます。特にカフェラテなどを頻繁に作る場合は、2カップ用など少し大きめのサイズが適しています。
一人用でゆっくりコーヒーを楽しみたい場合は、2カップ用がちょうど良いでしょう。このサイズなら、200mlから250mlのカフェ・オ・レも作れます。
マキネッタのサイズ選びは、使う人数や飲む量によって異なります。たとえば、1人で使う場合は2カップ用、2人で使う場合は3カップや4カップ用が適しています。
カップ数が多くなると、使用するコーヒー粉の量も増えます。例えば、2カップ用では12~15g、3カップ用では19~21gのコーヒー粉を使用します。
これを踏まえて、マキネッタを初めて購入する際は、2カップ用から始めることが無難な選択と言えます。
マキネッタとエスプレッソマシンの抽出法の違い
マキネッタ(直火式コーヒーメーカー)と電動エスプレッソマシンは、共に少量で濃厚なコーヒーを提供する点で似ていますが、抽出する過程で圧力と温度が異なります。これが両者のコーヒーにおける味わいの違いを生み出します。
マキネッタは通常、1~2気圧の圧力でコーヒーを抽出し、エスプレッソマシンは9気圧以上を用います。抽出手法にも違いがあります。マキネッタは沸騰したお湯が蒸気の圧力を利用してコーヒーを抽出するのに対し、エスプレッソマシンではポンプを使って高圧力をかけます。
また、抽出温度にも差があります。マキネッタは約100℃近くの沸騰点でコーヒーを抽出しますが、エスプレッソマシンでは通常85~95℃で抽出されます。
マキネッタで抽出されたコーヒーは高温であるため香り豊かですが、エスプレッソと比べると量が多く、口当たりは軽いです。ただし、エスプレッソのようなクレマはほとんど形成されませんが、そのままでも多くの人に美味しいと感じられます。
マキネッタの動作原理
マキネッタは、上部にコーヒーサーバー、下部にボイラーがあり、中間にコーヒー粉を入れるバスケットがあります。使用する際は、ボイラーに水を入れ、既に沸騰したお湯を使用することもあります。水はボイラー内の安全弁の直下まで入れるのが目安です。
コーヒー粉はバスケットにすり切り一杯にして入れ、粉がバスケットの縁に付かないように注意します。加熱すると水蒸気が発生し、この蒸気の圧力でお湯がコーヒー粉を通過して、サーバー部分に抽出されたコーヒーが溜まります。
このプロセスによって、水蒸気の圧力を利用して下から上に向かってコーヒーが抽出される仕組みとなっています。
マキネッタの使い方
ここではマキネッタの基本的な使い方を説明します。まず、マキネッタのボイラー部分に水を入れます。次に、コーヒー粉をバスケットに均等に詰め、表面を平らにして周りについた粉を拭き取ります。水の量はボイラー内のねじ止め部分までとし、コーヒー粉はバスケットにすり切り一杯が目安です。エスプレッソマシンで行う※タンピング(コーヒー粉を圧縮する行為)は必要ありません。
※タンピングはエスプレッソ抽出時にフィルター内のコーヒー粉に一定の圧力をかけ、水平に固める作業を指します。
次にバスケットをセットし、上部のサーバーを取り付けて蓋をしっかり閉めます。
その後、マキネッタを弱火に設定したガスコンロや五徳の上に置き、ゆっくりと加熱を開始します。沸騰の音が聞こえたら、サーバーの蓋をそっと開けて、コーヒーが上部のサーバーに移行している様子を確認してください。
近年ではガスコンロが少なくなっており、IH対応のステンレス製マキネッタも市場に出ています。例えば、ビアレッティ社の「モカインダクション」やG.A.T社の「マグニフィカ」などがあります。
マキネッタは屋外での使用にも適しており、風の影響を受けにくく、いつでも熱々のコーヒーを楽しめます。
マキネッタ用コーヒー豆の選び方
ビアレッティ社のあるイタリア北部では、一般的に「ミディアムロースト」(日本でいう「シティロースト」)のコーヒー豆が好まれます。この焙煎度では、軽い苦味と爽やかな酸味が特徴です。コーヒーに砂糖を加えると、甘く酸っぱいデザートのような味わいが引き立ちます。
一方、イタリア南部では「ダークロースト」(日本でいう「フルシティロースト」)が好まれ、これを使うと、砂糖を加えた時のビターチョコのような深い味わいが楽しめます。
マキネッタで使用するコーヒー豆は、高温や高圧での抽出に適した特別に調整された豆が最適です。マキネッタを初めて使用する場合は、イタリア産のコーヒー豆を試すと良いでしょう。好みに合わせて、「ミディアム」を選べば爽やかな酸味を、「ダーク」を選べば濃厚な苦味を楽しむことができます。
ブリッカで簡単にクレマを楽しむ
クレマを簡単に楽しむためには、ビアレッティ社製の「ブリッカ」がおすすめです。この製品は通常のマキネッタの基本構造を保ちつつ、特殊なバルブを使って圧力を高め、クレマの生成を促進します。
ブリッカにはコーヒーが抽出される部分に重しとして機能するバルブがあり、これによりエスプレッソマシンに近い高圧での抽出が可能となり、クレマの形成を助けます。
この特殊バルブのおかげで、通常のマキネッタよりも高い約2気圧の圧力を実現しています。家庭で手軽にクレマを楽しむには最適な選択です。
マキネッタの正しいお手入れ方法
マキネッタを清掃する際は、洗剤を使わないことが重要です。洗剤の香りが残るとコーヒーの風味に影響するためです。また、食洗機での洗浄も避けてください。
お手入れは非常に簡単で、使用後は水でさっと洗い流すだけで、自然乾燥させるだけで十分です。新品のマキネッタではコーヒーの油分や色が目立つことがありますが、これを完全に取り除く必要はありません。
使い続けることでマキネッタはコーヒーの成分に馴染み、より深い味わいを楽しむことができるようになります。
イタリアでのマキネッタの楽しみ方
イタリアでは多くの家庭でマキネッタが使われており、その利用方法は家庭によって様々です。長年愛用されているマキネッタは、家庭の日常に溶け込んでいます。
一部の家庭では毎朝のルーチンとして、他の家庭では週に数回、特別な日に使われることもあります。朝食には通常、ミルクを多めに加えたカフェオレが好まれますが、カプチーノは家庭で作るよりもカフェで楽しむものとされています。
イタリア人はマキネッタで淹れたコーヒーをさまざまな方法で楽しみます。砂糖を加えたり、アイスクリームを添えたりすることもあります。砂糖を入れたコーヒーでは、溶け残った砂糖を最後にすくって食べるのも一つの楽しみ方です。
マキネッタで始める、簡単でおいしいコーヒー体験
マキネッタは発明されてから約1世紀経つ今もなお、世界中で愛され続けています。このシンプルで使いやすいコーヒーメーカーで、家庭で気軽にエスプレッソ風のコーヒーを楽しむことができます。特に、コーヒーにミルクを加えたい人やカフェオレを好む人には最適です。
その優れたコストパフォーマンスと洗練されたデザインにより、キッチンに一台あるだけで日常のコーヒータイムがより豊かになります。
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